『「私」の国分一太郎研究』は、国分一太郎の生きた時代とその思想の研究であると同時に、「私」自身の自己史でもある。

豊島作文の会 10月例会の報告

豊島作文の会 10月例会の報告

第452回 10月例会(10月23日)報告    2010年11月16日

参加:伊藤、片桐、富山、土屋、工藤、榎本(豊)、榎本(典)、鈴木

《提案》
  『現場での最後の作文指導』
            提案者   榎本 豊 さん(墨田区立堤小学校)

1.はじめに
 再任用短期として三年間、再雇用として二年間を同じ堤小学校で勤めること
ができた。
学校は統廃合のため、今年度でおしまいになる。私自身もあと半年で締めくく
りということになる。
 今年は本当は理科専科6時間だけだったのだが、ぜひにということで、結局
2年生から6年生まで、週1時間、作文の授業を担当することになった。
 昨年までは飛び込み授業という形、たとえば人権集会の作文指導のために集
中して授業をやらせてもらうなどしていたのだが、今年は、定期的に毎週一時
間はもらっているので、面白いのだけど、正直ちょっと大変な面はある。
 しっかりと文章表現力を伸ばしていくために、各担任には「日記指導」をや
ってもらい、おもしろい作品などあったら、子どもたちに読んで紹介してあげ
てくださいとお願いしてある。またそのような作品が出てきた時などは、それ
を読ませてもらったりもしている。5、6年は担任が忙しいので、私が主にな
って子どもたちの日記を読ませてもらっている。

2.指導の経過
(1)日記指導のスタート
(ア)「日記の書き方」からしっかり教える。題名は、三マスあける。書いた
日の日付けや曜日はかならず書く。会話は、「……。」を使って文にする。思
ったり考えたりしたことは、(……。)を使って文にする。会話のあとに、声
の調子や相手の表情などを工夫して表現するとよいなど、基本的なことを一つ
一つ教えていった。
(イ)さらに、2、3年生では、日記にはどんなことを書いていけばいいのか、
ということで次のような授業も実施。

めがねざる
                三年  かばや あきつぐ
 お姉ちゃんは、前から、目が悪くて、今日、めいしゃに行った。
 お姉ちゃんが、めがねを買って、ぼくを見たら、めがねのしんが赤むらさきで、
ケースの色は、むらさきでした。
 お姉ちゃんは、さるどしなので、
「マンマンマーチのめがねざる。」
といったら、ふくれっつらをした。

   
 上のような短い文章を使い、読み合いをし、いいところ、直した方がいいと
ころなどを考え合う勉強をしていった。
たとえば、
・この作品のように、日記というのは、題をつけていることが大事だねとか、
・文の初めの書き出しは、このように一マス空けることが大事だねとか、
・ただこの文章の中では、「ふつう体」(「行った」「ふくれっつらをした」)
と、「ていねい体」(「むらさきでした」)がまざっていること、こういうふ
うに混ざって書くのはよくないんだよとか、
・よく「五官を働かせよう」というけれど、目をよく使っているところはどこ
だろうかなどということ。
このようなことを、上のような作品を通して具体的に教えていった。
同様な方法で、会話の書き方(かぎカッコを使うこと、行かえをすること、会
話の下は空ける等)なども、勉強していった。

(ウ)「表現意欲喚起」のため、さまざまな参考作品を紹介し、読み合った。
「何を」(題材)「どう書かせるか」(記述)を具体的に、文章に即して教え
ることが大事なので、参考作品をプリントして読み合い、「生活のしぶり」の
いいところ、「書きぶり」のいいところをみんなで見つけ合う学習をした。
・『三年のはじめの日』(東京 鈴木宏治郎)…永易 実さん指導
・『木へんに秋は何と読むの』(深沢良信)…榎本さん指導
・『初球は作文』(秋山智也)…榎本さん指導
・『お母さんのお手伝いをしたこと』(三年 やなぎ橋 めい)…左川紀子さん指導
・『長いお使い』(墨田区立立花小学校 五年 遠藤 昭城)…榎本さん指導

(2)まとめてみると、つぎのような形で文章表現指導をしてきたことになる。
全学年共通
①新しい学年になって、心に強く残ったことを書いてみよう。
②文をくわしく生き生きと書く方法。
③わたしたちのたんにんの先生は、こんな先生だ ―詩で書こうー。
④詩の勉強。

低・中学年
①日記には、どんなことを書けばいいのかな。
②お手伝いをしたこと(おつかい・そうじなど)のことを書こう。
③日記は、続けて書いてこそ値打ちがある。

中・高学年
①題材の見つけ方。
高学年
①相手の人を傷つけるような人権無視はやめよう。
②卒業文集(6年)。

その他
①学校で学習していることを取り上げて、文章に書いてみよう。
②世の中のできごとに関心を持って、取り上げよう。
③学校の行き帰りに、心に強く残ったできごとを書いてみよう。

''(3)指導を続ける中、キラリと光るものの入った作品が、子どもたちの日記
の中に出はじめてきており、各学年の1枚文詩集『はらっぱ』に掲載、授業で
読み合っている。
''
作品を取り上げ紹介、ほめていくポイントとしては、次のような点を重視して
いる。
①書いたことをほめる。
②一つのことを書いていることをほめる。
③題のつけ方をほめる。
④めったにないことを題材に選んだことをほめる。
⑤自分の気持ちを素直に書いていることをほめる。
⑥したことをしたとおり書いていることをほめる。
⑦聞いたこと、話したことを書いたことをほめる。
⑧まわりの人のことを書いたことをほめる。
⑨いつ、どこで、だれと、どうした話かはっきり書いたことをほめる。
⑩読む人のために説明していることをほめる。
⑪ 心のはたらかせ方をほめる。
⑫ 表現技術が生かされていることをほめる。

3.職員室、大笑いに!
(1)道草を食おう
 ふつうは道草を食っちゃいけないと言われるけど、日記を書くためには、
道草を食いながら、こういう文章を書くといいのだよということで、その見
本として、『雨の日の登校』(四年 吉田琴乃)という作品、さらに、下校時、
道草を食いながら帰っていくという、もう一つの作品を、2、3、4年で読み
合いをした。そして、「学校の行き帰りには、道草をして帰ると、楽しいこと
にたくさん出会うよ。」と話したのだが…。

(2)葉っぱを食べた?
 2年の酒井先生から、とても面白いのだけど、分からないので読んでみてく
ださいという作品を手わたされた。そうすると、葉っぱを食べて、にがかった
のではきだしたと書いてある。
 次の日の5時間目、作文の授業があったので、「なんで草、食べたの?」と
聞くと
「榎本先生が道草を食べなさいって言った。」と言う。
この話、職員室中、大笑いになってしまった。

*次の作品は、あとから榎本先生から送られてきたものです。一度、膝下指
導が入っているようです。
 

『道草を食べてしまったこと』
                           二年 山さき 大すけ

 十月六日、ぼくは学校から学どうに行くときのことを、にっきに書くことに
しました。さく文ちょうとえんぴつをもちながらあるいていました。こうえ
んに三十センチくらいの草がありました。その日の作文のじゅぎょうで、えの
もと先生に「道草を食うといいんだよ。」と言われていました。その時の作文
とは、水たまりにあそびながら楽しく帰る作文でした。ぼくは、そのことを思
い出して、それを食べてみました。でも、すこしかんだらまずかったので、ペッ
とはき出しました。
 少しあるいたら、二十四センチメートルくらいの落ち葉を見つけました。
(大きいなあ。)
と思いました。また歩くと、五センチメートルくらいの落ち葉を見つけました。
(ずいぶん小さいなあ。)
と思いました。少し歩くと、二センチメートルくらいのどんぐりをふんでみま
した。われるとどうなるかと思い、ふんだだけでは、われませんでした。
(どんぐりってつよいんだなあ。)
と思いました。歩いていたら、よこの前にトラックと車が一台ずつありました。
(とちゅうはぶく) 
 上を見上げたら、青空とくもだけでした。白い花をとりました。まわりにい

たとりも、りくたちが走っていて、とんでしまいました。ぼくは、
「とにかくかんさつ!」
とつぶやい
て歩きました。はしってみたら、口のよこに虫が来たので、かおをうごかして
歩きだしました。
(とちゅうはぶく)
 月ときんぎょのしっぽが、がったいしたみたいなくもや、さっきしょうかい
した白い花もありました。どんぐりをふんで、のぼりざかを歩いてました。空
を見上げて、元気をとりもどして、かけあがりました。さかをかけあがって、
とちゅうで犬を見ました。ぼくは、
(かわいいな。)
と思いました。まえにかいだんを上がったので、
(ちかみちしちゃおう。)
とおもって、ちかみちをしました。
(とちゅうはぶく。)
 あるいて、がくどうに行きました。
 つぎの日、えの本先生がぼくの日記を、クラスのみんなに読んでくれました。
先生に、
「なんで草を食べたの。」
と聞かれたので、ぼくは、
「えの本先生が『道草を食べたことをさく文に書いてみたら。』って言ったから。」
とこたえました。そしたら、えの本先生が、
「道草をくうっていうのは、より道することなんだよ。」
と教えてく
れました。
 クラスのみんなは、大わらいでした。ぼくは、
(そうだったんだ。)
と思いました。
 道草のいみがわかってよかったです。

4.話し合い
A:「現場での最後の作文指導」、長い間、ご苦労さま。榎本さんに教えられ
た子どもたち、幸せだなと思う。

B:作文指導を続けてきたことで、人間と人間が開きあえる関係が築けたのか
な。子どもたちにいい影響を残すことができただけでなく、子どもたちから色
取りを受けて、教師も成長してきたのかもしれないね。

C:65歳まで作文教育ができる環境の中にいれたことはすごいことだねって、
話していたのね。来年の4月をすぎると、現場の子どもたちがいなくなってし
まうわけ。子どもあっての作文指導だから。すべてがなくなっていった時に、
この人、どうなっていくか心配!
豊氏:工藤さんをみならっていくから…。)

B:講師、アドバイザーみたいなところに進んでいただきたいと思うな。

C:聞きたいのだけど、子どもたちの日記、なんでこんなに良く書けてるのかな。
豊氏:6年生は、居残りで書かせたのが多いな。週2回の提出だけど、忘れて
くることが多い。そういう時は、居残りをさせ、家で書いてきた時よりも枚数
などノルマもきつくして書かせている。そうやって理科室に居残りさせて付き
合っている。)

B:普通の教員が、そういうことをやれるゆとりを持っているべきだと思うのね。
豊氏:書かない時は必ず理科室に連れて行って書かせる。現職の人はできない。
作文だけやっているわけではないから。)

B:こういうことのできる人間が、学校の教師の半分の数いたら、いい後ろ盾
になる。こういうのは、子どもにとってもいいと思う。

C:そうよね。

D:ふつう、「嘱託」というのは、一歩さがって見られるわけだけど、榎本
さんは、ちゃんと日記から入り込んで授業をやり続けている。1日、24時
間じゃないようながんばり方で、これだけのことをやれたのは、5年間、同じ
学校にいることができたからで、退職金をもう1回もらってもいいくらいすば
らしかった。

E:2年生から6年生まで、5学年も作文指導をしていくというのは、毎日本当に
大変なことと思う。でも、逆にいえば、榎本先生から指導を受けられる子ども
たちはすごく幸せだなと思うね。

F:65歳で終わってしまうのって、もったいないなあ。子どもが幸せというの
もあるけど、榎本先生みたいな先生がいる学校は、学校も職員もすごく幸せだ
なあと感じる。

G:榎本先生の提案を聞いていて、作文指導の基本はやっぱり日記指導にある
のだなあと思う。自分の実践に活かしていきたい。卒業文集のやり方もぜひ
提案してもらえるといいな。
豊氏:来週、理論研で、卒業文集で提案をすることになっている。私の
ホームページ『えのさんの綴方日記』にも、卒業文集の書かせ方として載せてある。)

B:いい人材が65歳でどんどん退職になっていく。退職者を活かす、いい方
法があるといいね。

豊島作文の会 11月例会のご案内~《第4回 国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会》に合流します!

第4回 国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会のご案内

主催・国分一太郎「教育」と「文学」研究会

共催・綴方理論研究会

1.日 時 2010年 11月27日(土)
        9時30分から4時30分(受付開始9時~)
*会場準備がありますので、8時45分くらいには図書室へ!

2.場 所 豊島区立池袋小学校  図書室   
  池袋西口(東武デパート側)より徒歩10分
  豊島区池袋1-3-8

3.内 容
午前・実践報告
『いちにのさぁん』の子ども達とともに
  笑いあり、涙あり、けんかあり…個性あふれる2年生の教室からはじけ、
あふれた詩や日記を紹介し、心を寄せ合い、ともに育っていった1年間を報告
            田中 安子(元横須賀市立小教諭・横須賀作文の会)
  午後・研究報告
  「書くことを通して自分をつくる」 ~班リレー日記に見る子どもの変容~
            貝田  久(上青木小教諭)
  午後・特別報告
  「明日を紡ぐ若者たち2010
           ~教え子たちの「高校時代の作文、そして今」
                安孫子 哲郎 (山形県立山形工業高校教諭)

4.会 費 1000円(資料代として。登録会員は無料)会員の年会費2000円。
5.その他・研究会終了後、池袋駅近くで懇親会を予定しています。
  懇親会にご出席の方は、事前 に電話等で連絡下さると、大変助かります。
 (連絡先)国分一太郎「教育」と「文学」研究会事務局長 榎本豊 090-4920-7113


豊島作文の会 12月例会のご案内

と き  2010年 12月4日(土) 午後2時~5時

ところ  豊島区立池袋小学校 5年1組教室

『’10年版 東京の子 第36集』を読む
   

提案
*各学年の詩と散文に関して分担して提案をする。
1年生:土屋さん
2年生:榎本(典)さん
3年生:片桐さん
4年生:鈴木さん
5年生:伊藤さん
6年生:工藤

*2010年 児童文詩集『東京の子』(第36集)を持ってきてください。          

                              (文責:工藤)

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