『「私」の国分一太郎研究』は、国分一太郎の生きた時代とその思想の研究であると同時に、「私」自身の自己史でもある。

「主要農作物種子法」の廃止に関して

「主要農作物種子法」の廃止に関して

2017年8月4日~6日 滝の会 夏合宿資料
                              工藤   哲


「主要農作物種子法」の廃止に関して
 購読している『選択』の4月号に、『食糧安全保障を脅かす「自殺行為」 売国農政「種子法廃止」の狂気』という記事、5月号に、『「里山・田園」を叩き壊す安倍政権 種子法廃止が招く「国土荒廃」』という記事が掲載されていた。
 「主要農産物種子法」というの自体全く知らなかったし、それの廃止が、国会で決まりそう(決まった)という記事で、これはどういうことなのかと調べてみた。あれこれ資料を漁ってみたのだが、以下の「農林水産委員会」の会議録を資料にしてみるのが一番良さそうと思い、その抜粋を作ってみた。

◎「2017年4月13日(木)第193回国会 農林水産委員会」参議院会議録より抜粋

◆参考人(西川芳昭君) 御紹介いただきました龍谷大学経済学部の西川です。
 今の佐藤参考人のお話は現場からの取組ということですが、私は一研究者として、種子のシステム、またその国際的な枠組みを背景としてお話をさせていただきたいと思います。
 時間が15分と限られている中で、一分間だけ私のことをお話しさせていただきますが、私は奈良県のタマネギの採種農家に生まれたんですけれども、昭和40年代、採種が海外に移る中で、うちの事業というのは廃業したわけなんです。したがって、もう本当に子供の頃から採種事業というものの国際競争というものの厳しさというものをもう身をもって、要は家の収入が途絶えるわけですから、そのような身をもって育ってきました。
 大学時代は、アメリカの農務省の遺伝資源導入プロジェクトにインターンとして派遣していただきまして、国の戦略物資としての種子というものの立場をこれも体感する形で経験させていただきました。
 大学を卒業してからは、ルワンダの内戦復興後のプロジェクトでアメリカの国際開発庁の種子返還プロジェクト、又はJICAのエチオピアの小規模農民のための種子供給プロジェクト等に関わることを通して、良質な種子を安定的に供給することの大切さ、農民にとって、国民にとって、国の食料安全保障にとって非常に大切なことであるということを理論的にも、また体感的にも体験してまいりました。そのことの経験を通して、またこれまで農水省や農民の方たち、また市民の方たちから学ばせていただいたことを皆さんにお分かちしたいと思います。
 本題に入らせていただきます。
 基本的なメッセージは、種子は公共のものであるということです。誰か個人のものではない、又は特定の企業が所有するものではないということが基本的な主張になっています。人間にとっての種子の大切さ、そして人権として全ての人間、特に農家ですけれども、が種子にアクセスすることの権利というものが保障されるべきであると、このような考え方を支えてきた法律的なインフラの一つが種子法であるというふうに理解しております。
 種子をこよなく愛した先人の言葉の中に、種子が消えれば、食べ物も消える、そして君もという言葉があります。これはベント・スコウマンという、世界で最後の種子庫を造る、世界で本当に種子がなくなった場合に最後のとりでとなる種子庫を造るのに尽力を尽くしたスウェーデンの方ですけれども。種が消えれば、食べ物が消えます、そこまでは分かると思います、農業をしている人なら誰でも分かることですけれども、そして君もということは、食べ物がなくなれば当然私たちも生きていけないわけですから、種子の大切さということをメッセージとして伝えている大切な言葉だと思います。
 また、食料、農業に関する責任を持っています国連機関のFAO(注:国連食糧農業機関)は、土壌、水、そして遺伝資源、すなわち種子ですけれども、これは農業と世界の食料安全保障の基盤を構成していると。この遺伝資源、種子は我々の配慮と保護に依存している資源であるというふうに書かれています。我々というのは、もちろん一人一人の人間でもありますけれども、企業も含めて様々な社会のプレーヤー、アクターが関わってこの保護に努めていかなければいけないというふうに考えています。
 今回、種子法の廃止に当たりまして一部その規則を種苗法の中に取り込むというお話が出ておりますけれども、そもそも種子法と種苗法というのは目的が違っているというふうに私自身は理解しております。
 種子法は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進することを国、自治体を含めて、責務又は義務として定めたものであります。一方で、種苗法は、新しい品種を開発した育成者の権利を守る、知的財産権を守ることを主たる目的とした法律でありますので、目的とするところが違うわけで、育成者の権利を守る法律のその要綱なりまたその実施事項の中に国の義務というふうなものを持ってくるということは非常に難しいと思います。何らかのそごが生じるというふうに考えます。
 また、この種子法制定の歴史を振り返りますと、昭和27年、1952年の5月というのは、その前月、1952年の4月に日本がサンフランシスコ講和条約の発効に伴って主権を取り戻した、その時期です。この時期には多くの今の日本を支える法律が成立しておりますけれども、新しい日本をつくっていく、そのような動きの中で、農水省の官僚の方たち、当時の政治家の方たちが日本の将来の発展を目指してこの法律を制定されたというふうに私は思っております。
 また、国連の人権宣言、第二次世界大戦の惨禍の後、これを繰り返さないために国際社会が人権宣言というものを発表しておりますが、これを具体化する規約、いわゆる社会権規約の中では、この締約国、日本も含めてですけれども、全ての者が飢餓から免れる基本的な権利を有すること、そしてそれぞれの国は食糧の生産、保存及び分配の方法を改善することということが決められております。日本の政府としても、これに従っていく必要があるかと思います。

注:以下、参考のために引用する。
「 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(けいざいてき、しゃかいてきおよびぶんかてきけんりにかんするこくさいきやく、英:International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights、ICESCR)は、1966年12月16日、国際連合総会によって採択された、社会権を中心とする人権の国際的な保障に関する多数国間条約である。同月19日ニューヨークで署名のため開放され、1976年1月3日効力を発生した。日本語では社会権規約(しゃかいけんきやく)と略称される。同時に採択された市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約、B規約)に対してA規約と呼ばれることもあり、両規約(及びその選択議定書)は併せて国際人権規約と呼ばれる。

 自由権規約が締約国に対し即時的な実施を求めているのに対し、本規約は、締約国に対し、権利の実現を「漸進的に達成」することを求めている(第2条)。」(《出典》『ウィキペディア』)

注:これも参考のための引用である。
個別的人権規定
本規約は、第3部(第6条〜第15条)において、次のように個別的な人権を保障している。
第11条
相当な生活水準に対する権利。飢餓から免れる権利。食糧の生産・分配の改善。食糧の輸入国及び輸出国の双方の問題に考慮を払い、需要との関連において世界の食糧の供給の均衡な分配を確保。」
(《出典》『ウィキペディア』)

 具体的に、種子に関するシステムについてお話をさせていただきます。
 これは品種開発後の話ですけれども、種子システムの研究の世界では、フォーマルなシステムとインフォーマルなシステムがあるというふうに言われています。フォーマルなシステムというのは、政府機関の管理の下に供給される主として改良品種の認証種子に関わる制度です。多くの場合、知的財産権と関係しますので、種苗法で管理されています。一方、インフォーマルな種子システムといいますのは、農家自身による採種や農家同士の交換による認証されない主に在来品種、固定種等の種子供給を担っています。これは、人類の歴史とともに始まっている制度というふうに言ってもいいかと思います。
 種子法は、フォーマルなシステムの中に位置付けられるものではありますが、一般にフォーマルなシステムの中では知的財産権が強調されますので、企業、特に圧倒的な資金又は技術力を持つ多国籍企業が主たるプレーヤーとなることが多くなりますので、国が一定の管理又は介入をしなければ本当の意味での自由な取引というものができない可能性があります。その結果、フォーマルとインフォーマルのシステムが相互補完、連携することができなくなると思います。種子法があることによって、日本では世界的にも例外なグッドプラクティスとしてインフォーマルなシステムとフォーマルなシステムが連携しているというふうに考えています。
 お配りしている図の中にあるんですけれども、インフォーマルなシステムというのは、どちらかというとそれぞれの地域の中で種子が循環しているシステムというふうに考えられます。フォーマルなシステムの場合は、そこから遺伝資源を取り出して、ジーンバンク等又は育種組織等、企業も含めましてですけれども、そこで改良品種を作り、その改良品種を条件的に恵まれた地域で商業的に生産する、そのような形で遺伝資源、種子が使われることになります。
 この件に関しましても、民間企業が中心なプレーヤーとなりますと、条件不利な地域、日本の多くの中山間地等がそのような地域になるわけですけれども、こちらの方に優良な種子が安定的に供給されるということは非常に可能性が低くなるというふうに考えられます。一方、種子法の下では、先ほど佐藤参考人から費用が掛かるというお話がありましたけれども、あえて国から財政的な支援をすることによって、それぞれの地域に見合った品種をそれぞれの地域で循環させるというシステムが存立しているかと思います。
 種子のシステム、今は品種を開発した後のシステムについてお話をしましたけれども、遺伝資源の管理という面では、実は最初に育種の素材、例えばある特定の病気に強い、又は、今話題になっているものですと地球温暖化に対して適応するような品種、このような遺伝子を持っている品種を探索すること、集めてくることから始まります。そして、それを研究機関で研究し、この研究機関は公的な研究機関もありますし民間企業もございます。それを、多くの場合は産業としての農業や、一番利潤が上がるのは薬品、製薬関係ですけれども、そういうところで利用される商業的な利用を通して利益を出していくという利用が非常に一般的なんですけれども、同時に、循環型の利用の仕方がありまして、日本の国内で、例えば米の場合ですと、農林水産省の研究施設それから都道府県の研究施設で品種を開発し、それをそれぞれの地域に返していく。その際に、多様な関係者、農家、自治体、農協、その多様な関係者が参加できるシステムを形成しております。そのことによって、フォーマルとインフォーマルというものを結び付けているシステムが存在しているわけなんですけれども、繰り返しになりますが、種子法がこのシステムを下支えしているということです。
 ちなみに、種子が戦略資源であるということは、私たち研究者にとっては当たり前のことなんですけれども、なかなか日本の一般の市民の方々、御存じない場合があります。一九八二年まで遡って、NHKがドキュメンタリーを作成しておりまして、「一粒の種子が世界を変える」というふうなドキュメンタリーを作成しております。種子をめぐる世界で何が起こっているのかを描いて、また日本人にとって、人類にとっていかに重要かを検証したものです。
 また、その十年後には、カナダの政府系の財団の支援を受けて、ムーニーという人が「種子は誰のもの 地球の遺伝資源を考える」という本を書いておりますけれども、この本のメッセージは、種子は人類共有の財産であり、私物ではないという著者からのメッセージというものを訴えております。ちなみに、この本は、翻訳は当時の農林省種苗課の審査官御自身が翻訳をされています。当時の農林省の意気込みといいましょうか、種子に対する意識がかいま見られるかと思います。
 今現在、種子に関して三つの主要な条約がありますけれども、生物多様性条約、それから食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約、植物の新品種の保護に関する国際条約というのがございます。時間が来ておりますので細かい説明は省略しますけれども……(発言する者あり)あと三分ありますけれども、ちょっと結論まで持っていくのに、済みません、ありがとうございます。
 最後の、植物の新品種の保護に関する国際条約は、品種の育成振興、再三申し上げておりますけれども、知的財産権を保護するため、これは実は育成者権が強くなり過ぎることから、国の主権や国民の生活に良いことではないと判断している国が多くて、今も六十数か国しか締結しておりません。植物遺伝資源条約が百三十か国、生物多様性条約が百九十か国ということと比べまして圧倒的に不人気な条約で、これは、企業に種子の生産を任せるということがやはり国にとって非常に不安定な要因を招きかねないという懸念が、各国が認識しているという一つの間接的な証拠だと思います。こういうふうな状況の中で、種子法というのは、先ほどから繰り返していますけれども、フォーマルなシステムとインフォーマルなシステムを結ぶ画期的な、先進的なものだと思います。
 なぜ企業が種子にそれほどこだわるのかということですけれども、当然、種子を制する者は世界を制するというのは現在の常識になっていまして、資本による農業の包摂のための礎石として企業が入っております。ただ同時に、繰り返しになりますが、種子は食料、農業の持続的な社会的管理の根幹の部分に当たるものですので、このことを忘れていては、種子の管理というものは、政府の役割を果たすことができないと思います。また、生産者ニーズ、消費者ニーズの具現化ということも必要ですけれども、これは企業だけができることではなく、政府の管理の下に各プレーヤー、各アクターが協力して行うことが望ましいと思います。
 企業は、特許は必要な費用を回収する上で必要ですし、技術革新を促進する目的もある、ビジネスでは当然対価が支払われなければいけないということを言っていますけれども、それは当然のことなんですけれども、企業と実際の実需者、日本の場合ですと小規模な農家が多いわけですけれども、圧倒的な力の差があります。この場合、企業の参入を、イコールフッティングという言葉の下に参入を促しますと、ある意味では排除の論理が働くことになります。
 現在、国際的な枠組みであります持続可能な開発目標においては、包摂、様々なアクターが開発のプロセスに参加することが求められており、日本国政府もその基準に従って戦略を作っております。国家がやるべきことは、企業に形式的なイコールフッティングを与えるのではなく、実際のその企業の暴走を制御すること、そのことが役割だと思っております。
 国民と食料の関係を表す言葉には、食料安全保障という言葉と食料主権という言葉がございます。食料安全保障は、皆さんよく御存じのように食料を確保していくことですけれども、食料主権は、国家国民や農民が自主的に食料に関わる意思決定を行う権利というふうに定義されています。簡単に言いますと、国、地域又はそのコミュニティー、自治体レベル又は市町村レベルですけれども、その地域で何を作り何を食べるかという自律を保つことを決定する権利です。これは、国の主権、国民の主権に基づく概念だと思います。
 今、国の農業の競争力を強化する、このこと自体は非常に大切なことだというふうに考えますが、産業的な農業、競争力のある農業を保つためには多様な農家が参加できるシステムをつくる必要があると思います。その多様な農家が参加するためには、やはり今現在のシステムの中にある都道府県の普及のシステム、奨励品種のシステム、そのようなシステムによって、誰でもが良質な種子を安定した形でアクセスすることができるという、このシステムを継続することが必要だと思います。もし、そのシステムがなく、多様な農家の参画するシステムが確保されないのであれば、その多様なシステムというのは池のようなものだと考えます。そして、産業競争力のある農業というのは、その池に浮かんでいるボートのようなものだというふうに考えます。ボートだけを生かそうと思っても、池が干上がってしまっては日本の農業の将来はないというふうに考えていますので、その将来を支えている種子法を廃止する法案に関しては、私自身はかなり大きな問題を、大きな禍根を残すのではないかというふうに考えております。
 ありがとうございました。
=途中省略=
◆参考人(佐藤博君) 結論から申し上げまして、まずそれは実質的にはないですね。当然、県の予算査定、担当から順番に、財政課長調整、査定、それから総務部長調整、最後に知事査定という形で段取りを踏んでいきますけれども、担当レベルの提出資料の中には、国もそうでしょうけれども、もう相当の資料、事細かにいろんな資料がありますので、そうした中に主要農産物種子法と、これが根拠になった法律ですよというふうな、そういう記載は多分あろうかと思います。
 予算のことに関しまして様々巷間言われておりますけれども、まず、県の財政が厳しい中で、不要不急の予算、これは当然おのずと削減されることでありますし、それから少ない経費で最大の効果を求められると、これもまた当然のことでございます。農業県秋田で、しかもこの基幹作物の米等の品種の例えば開発ですとか種子の生産に関わるものが、予算が、少なくともこの法の廃止をもって削減されるですとか後退するということはまずあり得ないですし、当県の知事はそういうことはしないというふうに申し上げておきたいというふうに思ってございます。
=途中省略=
◆小川勝也君(民進党・新緑風会) この法案の廃止は、民間が主体的に、いわゆる主要農産物の種子の世界にも参入するということが明確に書かれているわけであります。
 次は西川参考人にお伺いをしたいというふうに思いますけれども、今、県の農政の御担当から、今までの主要農産物種子法で問題はなかったというふうに発言を私は伺ったというふうに考えております。なのに、今国会の主要農産物種子法は、修正でもなく改正でもなく廃止。これは、政府のどういう意図を持ってこの主要農産物種子法を廃止するというふうになったと類推、拝察されるのか、西川参考人のお立場でお答えをいただきたいと思います。
◆参考人(西川芳昭君) 類推、知る限りにおいての回答になるんですけど、やはり今回の全体が農業競争力強化支援法との関連においてといいますか、その枠組みの中での議論ですので、やはり外資の導入というふうなことが背景にあるということは推察されるかと思います。しかも、ピンポイントで、農業のいろんな生産資材の中で、ほかの部分でももちろん議論されていますが、種子法の廃止に関しては、主要作物の種子の生産の部分にピンポイントで外資が参入できるということが意識されているということは、やはり国民としては非常に懸念されると思います。
 実際、一九八六年以降の種子法では、その通達で、奨励品種にしましても、いろんな制度は民間の参入を決して拒んではおりませんので、先ほど佐藤参考人がおっしゃったように、今までの制度で何の問題もなかったと、たまたま民間が入ってこなかっただけだというふうなことなので、この背景にあるのは、やはり特定の種子という分野に、外国の企業を含めて、多国籍企業を念頭に置いて参入を促進したいという意図があるというふうに推測しております。あくまでも推測であります。
◆小川勝也君 私も家庭菜園をやっておりまして、園芸ショップで買ってきた種を見ますと、外国で生産された種子が当然あります。それから、当然のことながら、主要農産物以外の種子はほとんど民間が作っているわけであります。なのに、この主要農産物というふうに書かれていることに私は意義があるんだというふうに思います。いわゆる稲、大豆、麦、この主要という言葉に非常に大事な意味がこもっているということを含めて、この主要農産物の種子、それからそれ以外の種子、あるいは国、県、民間の役割、このことについてどのように整理をしたらいいのか、改めて西川参考人の所見をお伺いをしたいというふうに思いますが。
◆参考人(西川芳昭君) ありがとうございます。
 おっしゃいましたように、主要農作物というところが係っていることが非常に重要だと思います。私たち一人一人の国民にとって、食べていくことができるこの種子の確保を、増殖を国が責任を持って県に義務を課し、それぞれの地域に合ったものを生産するということを保障していると。これが園芸作物であれば、もしかすれば、今年はバラの花を見ないで過ごそうと、そういうこともあり得ると思います。ただ、米、麦、大豆に関してそのようなことを私たちはできないわけです。
 実際、例えば民間参入の最も進んでいると考えられるアメリカ等におきましても、主要な作物の品種開発及び増殖に関しては、州立大学、州の農業試験場等々ですね、公立の機関、パブリックドメインというような形で遺伝資源の場合言いますけれども、公的な機関の中にある分野が、主要な作物、それぞれの国にとって大切な作物は責任を持っております。もちろん、民間参入を拒んではいません、比率としては六割、七割というようなところが公的なものですけれども。したがって、私たちの国の場合でも、やはり、国、県等、公共的な組織が主要作物に関しては責任を持っていくべきだと思います。
 一方で、民間も当然活力を生かしていくことができると思いますし、種子の生産に特化して種子法を廃止しなくても、生産物の加工とか流通とか、そういうところで現在も民間はいろんな場で活躍していますし、長くなって申し訳ありません、あと三十秒だけあれですけれども、例えば大分県に「いいちこ」という焼酎を造っている会社がありますけれども、下町のナポレオンと言いながら、あの焼酎は100%オーストラリアからの輸入の大麦を使っていますけれども、あの会社はニシノホシという純国産の大麦を使った焼酎を造っているんです。これは、旧農水省の九州農業試験場が、蒸留用に最も優れた品種で大分県の宇佐平野に適した品種を開発し、大分県がそれを奨励して、結果として「いいちこ」が市場価格よりも高い価格で買い入れた形で市場に流していると、こういう形での国、県、民間の連携というのは現時点での種子法の下でもできたわけで、種子法が民間のいろんな形、民間の活力の参入を阻止、阻んでいるというふうに私は考えておりませんので、国と県、それから民間の役割の分担というのは、今後とも、その時代に合ったものを作っていく必要はあると思いますが、廃止をする必要はないというふうに考えております。
◆小川勝也君 続いて、西川参考人に教えていただきたいんですが、私は少し疑り深い性格でありまして、民間企業というのはこれ営利企業でありますので、いわゆる種子をめぐってマーケットを確立したら、利潤を上げようと思います。そうしますと、種子の値段を上げる可能性があります。それから、リスクの一端では、その種子をしっかり押さえている企業が倒産をすることもあります。それから、その種子をしっかり押さえている国内メーカーが海外の企業に買収されるリスクがある、これも否めないというふうに思います。ですから、主要農産物に限ってこの種子法が存在していると私は理解しているわけでありますけれども、私の考えるこのリスクについて、西川参考人の御所見をお伺いしたいと思います。
◆参考人(西川芳昭君) まず、価格面ですけれども、今でも民間の育種の品種というものの種子の価格が非常に高くなっております。農水省自身が出されておる数字でも三倍とか五倍とか、そういうふうな形に、みつひかりとかですね、そういう品種で出しておりますので、今後、民間になると、種子の値段というのは非常に不安定になる、高くなる一方ではないと思いますが、不安定になるということを考えております。
 それから、外資が入ってくる又は日本の企業が外資に買収されるというようなことになりますと、先ほども言いましたけれども、私たち国民が国家に委ねている遺伝資源が海外に流出する、それは私たちの、米、麦、大豆というのは私たちの生活の根幹に関わる、日本は資源が少ない国ですけれども、生物資源、特に稲の資源に関しては非常に豊かな、世界でも最も豊かな国の一つなんですけれども、これが流出するという危険性というのは私は非常に意識しておりますので、やはり種子法は、どういうんでしょう、このリスクから守る一つの手だてとなっているというふうに考えます。
◆小川勝也君 国会が、私たちがだらしないおかげでこの種子法がなくなるわけでありますので、大変残念な思いでいっぱいであります。しかし、(以下、省略)。

衆議院
●主要農作物種子法を廃止する法律案

第一九三回
閣第二三号
   主要農作物種子法を廃止する法律案
 主要農作物種子法(昭和二十七年法律第百三十一号)は、廃止する。
   附 則
 この法律は、平成三十年四月一日から施行する。

     理 由
 最近における農業をめぐる状況の変化に鑑み、主要農作物種子法を廃止する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

議案名「主要農作物種子法を廃止する法律案」の審議経過情報
衆議院審議終了年月日/衆議院審議結果 平成29年 3月28日 / 可決

衆議院審議時賛成会派 自由民主党・無所属の会; 公明党; 日本維新の会
衆議院審議時反対会派 民進党・無所属クラブ; 日本共産党; 自由党; 社会民主党・市民  連合

参議院
議案要旨
(農林水産委員会)
主要農作物種子法を廃止する法律案(閣法第二三号)(衆議院送付)要旨
本法律案は、種子生産者の技術水準の向上等により、種子の品質が安定してきているなど、
農業をめぐる状況の変化に鑑み、平成三十年四月一日に主要農作物種子法を廃止するも
のである。
議決日 平成29年4月14日
自由民主党・こころ(126名)    賛成票 117   反対票 0
(磯崎 仁彦  今井 絵理子  世耕 弘成  松村 祥史 丸山 和也  馬場 成志   酒井 庸行   末松 信介   藤木 眞也)
 
民進党・新緑風会( 50名)     賛成票 0   反対票 50

公明党( 25名)          賛成票 25   反対票 0

日本共産党( 14名)        賛成票 0   反対票 14

日本維新の会( 12名)       賛成票 12   反対票 0

希望の会(自由・社民)( 6名)  賛成票 0   反対票 5

無所属クラブ( 4名)       賛成票 3   反対票 1
(○アントニオ猪木 行田邦子  薬師寺みちよ  ✕松沢成文)

沖縄の風( 2名)        賛成票 0   反対票 2

各派に属しない議員( 3名)     賛成票 1   反対票 1
(○山口  和之  ✕郡司   彰   棄権?伊達  忠一)


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